遺言執行者の選び方

文責:弁護士 井川卓磨

最終更新日:2024年08月15日

1 信頼できる人を遺言執行者にする

 遺言執行者とは、遺言の内容を実現する役割を与えられた者です。

 相続財産のうち、預貯金や金融資産の解約だけでなく、場合によっては、不動産の名義変更や売却手続きをすることもあります。

 遺言執行者は、未成年者や破産者でない限り、基本的には誰でもなることができますが、遺言執行者は、預貯金や金融資産の解約金を預かる立場にありますから、使い込みなどがされないように、信頼できる人を遺言執行者にすることが大切です

2 相続人の一人が遺言執行者になる場合

 遺言執行者は、すべての相続人や受遺者のために職務を遂行する立場にありますから、中立的な存在でなければなりません。

 そのため、本来は、相続人の一人を遺言執行者にすることは避けたほうが望ましいとはいえますが、実際には、相続人の一人が遺言執行者に指定されている事例は多く、裁判上も、遺言執行者が相続人の一人であるということだけを理由とした解任は認められないとされています。

 ただし、遺言執行者を相続人の一人とすることは、特に、相続において争いが予想されるケースについては、遺言執行の職務の進め方に対して、他の相続人から不満が出るおそれもあるため、避けたほうがよいという面があります。

3 専門家を遺言執行者に指定することも検討する

 遺言執行者の職務内容は、遺言執行者に就任したことを相続人らに通知する、遺言執行業務について問い合わせを受けたときに報告をする、遺産目録を作成する、遺言執行業務を終了したときにはその顛末を報告するなど、実は多くの内容を含んでいます。

 ただ、遺言執行者は、それらの職務のすべてを自ら実行しなければならないとはされておらず、必要があれば、これらの職務の一部を専門家に依頼して進めることができるとされていますので、自分で実行することが難しければ、専門家に依頼することもできます。

 遺言執行者を専門家に指定することもできますので、そうであれば、初めからそのような専門家を遺言執行者にすることもご検討ください

 そもそも相続人や受遺者に適切な候補者がいない場合には、遺言執行者を専門家に依頼するとよいかと思います。

 弁護士に遺言書の作成を依頼する場合、遺言執行者を弁護士に指定するケースも多くあります。

 この場合、遺言書の作成から遺言の執行までにある程度の長期間が経過する可能性があることを考慮すると、弁護士個人を指定するのではなく、弁護士法人などの法人を指定した方がより安心できるかと思います。

 遺言書で遺言執行者が指定されていない場合は、家庭裁判所に遺言執行者の選任の申立てを行い、遺言執行者を選任します。
 参考リンク:裁判所・遺言執行者の選任 
 

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